ネコを溺愛、静かな生活=リスト、ショパンの名曲と共に―フジコ・ヘミングさん死去
卒寿を過ぎてなおコンサートのため国内外を飛び回ったフジコ・ヘミングさん。「魂のピアニスト」と呼ばれ、熱狂的な人気を集める中、自宅では溺愛するネコたちと静かな生活を送った。
東京・下北沢。2021年8月、若者でにぎわう商店街からやや離れた自宅をインタビューで訪ねると、フジコさんが毎日練習する年代物のグランドピアノがまず目に入った。そして、家具に乗ったり、飼い主にまとわりついたりするネコたち。当時10匹ほど飼っており、「イヌもネコも好き。癒やされますよ、やっぱり」と目を細めた。動物愛護のチャリティーコンサートに熱心に取り組んだのも、うなずける。
晩年は演奏技術の衰えも見られたが、本人は気に留めなかった。コンクール審査員の依頼も断っていた。「みんなうまいから。15分しか弾かないで誰が天才かなんて神様しか分からない」。細かな技術追究には、われ関せずのスタンス。静かな心でピアノに向き合い、リストの「ラ・カンパネラ」など得意の名曲を徹底して弾き込んだ。
レパートリーの狭さを指摘されることもあったが、「石川さゆりにはいつも同じ曲を歌ってほしい。それと同じ。いつも同じ曲を聴きに来る人もいる」とフジコさん。「ショパンとかリストとか何十年も繰り返し弾いていますから、私よりうまいのがいたら聴いてみたいもんだって」。小手先の技術に頼らず、聴衆の心に染み入る音色を紡いだ自負心をのぞかせた。
[時事通信社]
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