フィギュア通じ「力強く自由に」 NYのリンク舞う黒人少女たち
【ニューヨークAFP=時事】一人また一人と、ドレスをまとったアフリカ系やバイレイシャルの少女が、映画『バービー(Barbie)』と『ワンダーウーマン(Wonder Woman)』のサウンドトラックに乗せ、米ニューヨークのセントラルパークにあるリンクへ出ていく。行われているのは「フィギュアスケーティング・イン・ハーレム(FSH)」が主催する年に一度の発表会だ。≪写真は、米ニューヨークの非営利団体「フィギュアスケーティング・イン・ハーレム〈FSH〉」の発表会で滑るメンバー≫
黄色の衣装を着た6人が、氷の上を軽やかに回り、バレエを思わせる息の合った演技を披露する。毎年、発表会に出演する300人の少女の大半は、ニューヨークでもとりわけ貧しいハーレムかブロンクス地区で暮らしている。人口850万のニューヨーク市は、米国経済のエンジンとされる一方、不平等によって分断されている。
FSHは、人口密度の高い多文化なマンハッタン北部で1990年代に設立された非営利団体だ。創設者のシャロン・コーエン氏は、当時のフィギュアスケートは「黒人や褐色の女の子がそれほど多く参加するスポーツではなかった」と振り返る。
それでも、現在プログラムに参加しているナディア・ニールさん(17)にとって、FSHは「人生のすべて」だ。6歳でFSHに入ったニールさんは「ハーレムでフィギュアを始める前のことは思い出せない」と語る。
同じく参加メンバーのアシュリー・プレンティスさんも「少しずつ学び、進化し、成長してきた。本当に美しい経験で、羽化したチョウのような気分だった」と話す。「滑っているといつも、力強さと自由を感じる」と言い、FSHで家族と仲間が見つかったと表現する。
■学習支援にも注力
ハーレムにフィギュアスケートを持ち込むというアイデアは1991年にさかのぼり、複数の黒人家族と、元プロアイススケーターのコーエン氏が共同で始めた。コーエン氏は「本当にコミュニティーあってのもので、その力でプログラムは年々大きくなっていった」と振り返る。
主に子ども向けのプログラムであるFSHでは、学習支援も行っている。コーエン氏は「教育が土台にあった。それがあれば、将来多くのドアが開く」と話している。
5歳から30歳までのメンバーのうち、ほとんどが黒人かヒスパニック、混血で、10人中9人以上が低・中所得の家庭の出身だという。ニールさんは「ハーレムの女の子は、必要なサポートを受けられないことがある」と明かし、そのせいで中には「間違った道に落ちてしまう」人もいると語った。
しかしFSHでは、夜に学習補助の授業が受けられる。スケートは人生のようだと言うコーエン氏。「最初は転ぶもの。氷の上に出たら誰だって転ぶ。1回転んだら、どう立ち上がり、どうやり直すか。それを学べる点で(スケートは)ユニーク。転ぶのはちっとも悪いことじゃない」と話す。
FSHは、スケートリンクでの成功と失敗の経験や学習支援は、長期的な効果をもたらすと訴える。団体によれば、参加者のほぼ9割が学校でトップクラスの成績を取り、多くが高等教育に進学するという。【翻訳編集AFPBBNews】
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