2021-07-29 07:10

開催待った1万羽の鶴=清掃会社の粋な計らい〔五輪〕

 外国人に「おもてなし」を誓って招致を実現した東京五輪。大半の競技が無観客開催となり、その機会は失われたかに見えたが、ある清掃会社が善意で用意した折り紙の作品が、外国人選手らの目を楽しませている。
 場所は夢の島公園アーチェリー場。和柄の折り紙の上に置かれた折り鶴が、殺風景と言える空間のトイレを彩る。目にした米国人男性記者は、「オリガミだよね。ファンタスティックだ。日本を感じられる」。女性トイレも同様に飾り付けられ、選手の更衣室や出番を待つ部屋には、千羽鶴が掛けられているという。
 手掛けたのは都内の清掃会社で、ほかの2会場も担当。「清掃だけやってもな。何か日本らしいもので、できることはないか」。職員の雑談から生まれた「おもてなし」のアイデアだった。昨夏までに1万2000羽以上の折り鶴を作製。もちろん職員ら約100人による手作りで、担当者は「鶴も1年間出番を待っていたんですよ」と笑った。
 1年の延期、首都圏の無観客開催が決まっても、会社の思いは変わらなかった。「外国の選手、関係者の方にちょっとでも喜んでもらえれば」。粋な計らいを控えめに話す担当者の作業着は、大量の汗でにじんでいた。