2024-09-04 17:56

鬼谷、夫とつかんだ銀=脳の難病乗り越え―パリ・パラリンピック〔パラリンピック〕

表彰式で銀メダルを手にし、笑顔を見せる鬼谷慶子=3日、サンドニ(ロイター時事)
表彰式で銀メダルを手にし、笑顔を見せる鬼谷慶子=3日、サンドニ(ロイター時事)
 パリ・パラリンピックの陸上女子円盤投げ(座位F53)で2日、初出場の鬼谷慶子(29)=関東パラ陸協=がアジア記録の15メートル78を投げて銀メダルを獲得した。女子の座位投てき種目で日本勢がメダルを獲得したのは20年ぶりの快挙だ。昨年4月の日本選手権では、まだ7メートル台しか投げられなかった。「記録もすごくて、信じられない。夢なんじゃないか」と目を輝かせた。
 20歳の時に脳の難病を発症。体幹機能が低下し、座った姿勢を維持することも難しくなった。リハビリでいくつかのパラスポーツを体験し、円盤投げを選んだ。
 座位の円盤投げは、専用の投てき台に体を固定し、上半身だけで投げる競技。初めての試合では体に合った投てき台を用意できずに通常の車いすで出場し、高さの調整には洗濯機のかさ上げ台を使うところからのスタートだった。
 車いすから投てき台へ移動する介助などを担うのは夫の健太さんだ。鬼谷が難病を患う前から交際し、昨年1月に結婚。投てき種目をやっていた経験を生かし、技術的な助言もしながら支えてきた。「本人が最高の瞬間を迎えるのを一番近くで見られた」とうれしそうだった。
 病気を発症した時は、入退院を繰り返し寝たきりの状態も続いた。鬼谷はふさぎ込みがちだった当時の自分に対して、今なら明るい言葉を掛けられる。「遠く離れたフランスで元気に円盤を投げられているから大丈夫だよ、と言ってあげたい」