2024-08-29 13:31

共生社会実現へ試金石=なるか「素晴らしい革命」―パリ大会意義〔パラリンピック〕

開会式であいさつする国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長(左)。右は大会組織委員会のエスタンゲ会長=28日、パリ(EPA時事)
開会式であいさつする国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長(左)。右は大会組織委員会のエスタンゲ会長=28日、パリ(EPA時事)
 フランス革命の舞台となったコンコルド広場での開会式で、強いメッセージが打ち出された。パリで初開催のパラリンピックに、共生社会実現に向けた国内の意識が高まることを期待する声は大きい。大会組織委員会のエスタンゲ会長は「素晴らしい革命が始まる」と宣言した。
 組織委は2015年から「アクセシビリティー(利便性)」を念頭にパラリンピック準備を進めた。重視した会場アクセス面は公共交通機関と全面協力。街のバリアフリー化を加速させ、全てのバスで車いす利用者の乗車が可能になった。特別仕様のタクシーも増えた。
 対策が不十分とされてきた地下鉄にも新たな動きが出た。多くの路線は古く、通路が複雑に入り組み、障害者にとって利用しにくい交通手段だった。しかし、開幕2日前の26日、20年をかけて「誰もが使える地下鉄」にする計画が発表された。総工費200億ユーロ(約3兆2000億円)とも言われる大改革。人権擁護団体の昨年の報告では、国内での差別は「障害」を理由にしたものが最も多かったというフランスで、大会開催による変化が生じつつある。
 大会運営姿勢は「オリパラ一体」。パラリンピックのスローガンは五輪と同じ「広く開かれた大会」とし、エンブレム、マスコットも五輪と同じものにした。6月には、パリのシンボル凱旋(がいせん)門にパラリンピックマークを取り付け、五輪期間中も多くの人が一体感を意識できるようにした。盛り上がりを見せた直前の五輪の効果もあり、パラのチケット販売数は200万枚を超えた。その9割以上が国内からの購入。4割が国外の購入だった五輪とは大きく異なった。
 フランスの人々にパラスポーツを見てもらう機会は整った。エスタンゲ会長は「選手たちのおかげで社会が前進する」と自信を示す。大会は、共生社会実現に向けた試金石となる。 
開会式で掲揚されるパラリンピック旗=28日、パリ
開会式で掲揚されるパラリンピック旗=28日、パリ
開会式に臨むフランスのマクロン大統領(中央右)と国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長(同左)ら=28日、パリ(AFP時事)
開会式に臨むフランスのマクロン大統領(中央右)と国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長(同左)ら=28日、パリ(AFP時事)