目まぐるしく順位が入れ替わるのがストリート種目の大きな見どころだが、そんな緊迫した状況すら楽しんでいるようだった。日本勢３人全員が残った決勝。中学３年生の吉沢は予選から完璧な演技を続け、堂々の金メダル。エッフェル塔を望むパリの中心で、これ以上ない笑顔がはじけた。
　予選のラン１本目に空中で板を複雑に回転させるなど複数の大技を詰め込み、流れに乗る。一発技のベストトリックでも、空中でのバランス感覚を武器にしたトリック（技）を成功させ、最初の２本はともに８０点以上。「楽しんで滑れた」。首位通過の勢いそのままに、決勝でも１４歳らしからぬ落ち着きが光った。
　幼少期に水泳やピアノなど多くの習い事をした中で、一番楽しめたのがスケートボードだった。「ここまで来られたのも奇跡」と言うが、そんなことはない。真面目で練習熱心。ひたむきな努力あってこその金メダルだった。