2024-07-27 17:25

まずは大役果たす=エスタンゲ組織委会長―開会式〔五輪〕

パリ五輪の開会式でスピーチをする大会組織委のエスタンゲ会長=26日、パリ(EPA時事)
パリ五輪の開会式でスピーチをする大会組織委のエスタンゲ会長=26日、パリ(EPA時事)
 26日のパリ五輪開会式は、セーヌ川を舞台にかつてない壮大な演出で行われた。夏季五輪で初となる競技場外での実施。多くの困難を押しての実現には、大会組織委員会のトニ・エスタンゲ会長のリーダーシップが不可欠だった。
 そもそもパリは治安面で課題を抱えており、競技場を離れての式典は非現実的と思われていた。さらにストライキ問題のほか、当日にはフランスの高速鉄道(TGV)網が破壊行為を受けた。開会式に関する話題はネガティブなことばかりが目立っていた。
 そんな中、会長は前向きな姿勢を崩さなかった。当初60万人を見込んでいた観客は、警備上の理由で30万人に減らさざるを得なかった。その決定後、見通しの甘さを指摘する声も漏れたが、「これは(開会式を)成功させるために必要なことなんだ」と言って説得に努めた。
 カヌーで五輪3大会連続金メダルのアスリートは、組織を率いる立場となり、「信頼を得ることも私の仕事」。周囲に目を配りながら、冷静にポジティブに。五輪で縁を持ったフランスのマクロン大統領、パリのイダルゴ市長を見ながら自分なりのリーダー像を考えていったという。
 ぶれない会長の姿勢が周囲を勇気づけていった。組織委のメンバーは「彼は偉大な金メダリストでありボス。私たちにいい影響を与えてくれる」。そんなトップがいたからこそ一致団結した。
 開会式のスピーチで会長は「情熱を持ってあらゆることに挑戦してくれたパリ2024のチームに感謝している」と語った。多くの部下に慕われるボスは、ねぎらいの言葉を忘れなかった。
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 トニ・エスタンゲ氏 カヌー・スラロームの選手として00年シドニー大会から五輪で3大会連続の金メダルを獲得。国際オリンピック委員会のアスリート委員を務める。パリ五輪・パラリンピック招致に携わり、17年から大会組織委員会会長。フランス・ポー出身。46歳。