高齢者学級で相手国を学ぶ=セルビア非常勤職員が出前講座―埼玉県富士見市
埼玉県富士見市で19日、ホストタウン相手国のセルビア出身で市教育委員会生涯学習課で非常勤職員として働いているアナ・ロゴさん(25)が、高齢者向けの教養講座(高齢者学級)で同国について出前講座を行った。約120人の高齢者が、セルビアの地理や文化、観光地、食などについて理解を深め、セルビア語の簡単なあいさつも学んだ。
教養講座には、会場となった鶴瀬公民館で行われている60歳以上が対象の「第44期鶴瀬学級」(5月〜来年3月)で学ぶ高齢者が参加した。今回、ホストタウンについて理解を深め、興味を持ってもらおうと企画された。
ロゴさんは来年4月から埼玉大学大学院で学ぶ予定で、今年6月からセルビア紹介などのため生涯学習課で勤務している。
出前講座の冒頭、セルビアには北海道と同程度の面積に約800万人が住み、ルーマニア、アルバニアなど8カ国に囲まれていることを説明。首都ベオグラードや第2の都市ノヴィ・サドを中心に観光地などを紹介し、「東京だとJR渋谷駅のハチ公前で待ち合わせをするが、ベオグラードでは共和国広場の人が馬に乗った『クネズ・ミハイロ像』前で会う」などと述べた。
さらに、日本では各地に神社があるものの、セルビアでは要塞(ようさい)や教会が多いことも紹介。食文化ではパンや肉の種類が豊富な点をスライドで見せながら、「野菜や果物は1、2キロ単位で買い、パプリカは100円で3キロ、リンゴは3、4キロ買える」と説明すると、会場からは驚きの声が上がった。
セルビアはスポーツも盛んで、テニスのノバク・ジョコビッチを擁し、女子バレーボールも東京五輪に出場すると報告。レスリングも4人の五輪出場が決まっており、「市で行われる五輪の事前キャンプで皆さんが選手と交流する機会がある」と語った。
その後、セルビア語は、ひらがなに相当する「キリル文字」とカタカナに相当する「ローマ字」で構成されると解説。参加者全員がロゴさんに続いて発音を練習し、「チャオ」(こんにちは、さよなら)、「ファバーラ」(ありがとう)といった簡単なセルビア語も学んだ。
質疑応答では、会場から「来日時と今の日本の印象は違うか」「セルビアの選手が来日したら英語は通じるか」などの質問が相次いだ。ロゴさんは「セルビアには先輩と後輩の関係はないが、日本では(今、研究生として通っている埼玉)大学でも慣れるのに時間がかかった」「誰でも英語は話せる。セルビアに行っても通じると思う」などと丁寧に答えていた。
約1時間に及んだ出前講座の最後には、会場からロゴさんに、学んだばかりの「チャオ」「フヴァーラ」とあいさつが飛ぶ場面があり、ロゴさんも笑顔で応じていた。
高齢者学級(鶴瀬学級)の三浦清隆運営委員長(71)は「ホストタウンのセルビアとの交流にはみんな前向きだが、興味はあってもどこにあるのか分からない人もいた」と開催の趣旨を説明。「ロゴさんの説明も分かりやすく参加者に好評で、ものすごくセルビアを身近に感じた。ホストタウンへの関心の高さを来年のオリパラの盛り上げにつなげるため、地域としても協力していきたい」と語った。〔国指定史跡である水子貝塚の保存と活用のために整備された「水子貝塚公園」は日本の歴史公園100選に選定〕