2021-07-19 15:48

集大成迎えるベテラン=延期の1年、葛藤乗り越え〔五輪〕

 新型コロナウイルスの感染拡大で、東京五輪の延期は昨年3月に決定。その後も「中止になるのではないか」との疑念を抱いていた選手は多かった。開催が実現する今、さまざまな葛藤を乗り越え、舞台にたどり着いたベテランがいる。
 スポーツクライミング女子の第一人者、野口啓代(TEAM au)は、競技が初実施の東京五輪を最後に現役を退くと表明していた。延期が決まってからも、「開催を信じて、自分ができることを精いっぱいやっていこう」と32歳で迎える最後の舞台に備えてきた。待ち望んだ五輪。「楽しい気持ちを最後まで持ち続けたい。それを登りで表せたらいい」
 フェンシング女子エペで35歳の佐藤希望(大垣共立銀行)は、8位入賞した2016年リオデジャネイロ五輪後に引退を考えた。翌年に次男を出産。2人の息子に東京五輪で戦う姿を見せたいと思い、18年に再び剣を握った。無観客で画面越しにはなるが、母の勇姿を届ける望みがかなう。
 一方で、バドミントン女子ダブルスでリオ金メダルの高橋礼華さん、12年ロンドン銅メダリストでバレーボール女子の新鍋理沙さんら、延期をきっかけに引退した選手もいた。1年先の開催が不確実な情勢だった中、人生設計を考えつつ肉体的な衰えと向き合った日々。目標を再設定するのは容易ではなかっただろう。
 6度目の五輪となる飛び込み男子の寺内健(ミキハウス)は、五輪は「毎回集大成」と言い切る。現役生活の区切りと位置付けはしないが、全力を尽くす考えだ。「試合をさせてもらえる環境はすごくありがたい。今までよりも強くそう思う」。昨夏コロナ感染を乗り越えた40歳は、感謝と責任を胸に大会に臨む。