2021-07-19 07:03

残せるか「レガシー」=スポーツ政策に逆風も―東京五輪〔五輪〕

 東京五輪は23日に開会式を迎える。招致が決まった8年前、五輪は国のスポーツ政策を後押しする転機になると大いに期待された。しかし新型コロナウイルスの影響で、様相は一変。開催反対の声も多い中、「レガシー(遺産)」は受け継がれるのか。
 2013年に東京大会の開催が決まった2年後、文部科学省の外局としてスポーツ庁が発足。五輪に向けた環境整備やトップ選手の強化を中心に、国費が投じられてきた。昨年の1年延期決定後でも、国のトップ選手強化関連予算は100億円台の規模を維持した。
 その分、関係者には今後の不安がある。コロナ禍で延期された末に開催される大会に巨額の税金が費やされ、スポーツそのものに対しても世間の理解が得られにくくなってきた。大会後も選手育成に予算をつぎ込むべきか、との議論が出てくるのは必至。ある競技団体関係者は「五輪後には当然強化費に影響が出る」と悲観的に話す。
 大きな財源となるスポーツ振興くじ(愛称toto)の売り上げは16年度の1118億円をピークに減少が続いていたが、19年度の938億円から20年度は3年ぶりに大台を超えて1017億円を売り上げた。バスケットボールのBリーグにも対象を広げることが決まり、売り上げ増を目指している。五輪中止とくじの購買欲に直接の影響はなさそうだが、使途には厳しい目が注がれよう。
 国立競技場周辺や有明、夢の島など臨海地域では五輪を契機に開発が進められた。しかし、アーバンスポーツなどの仮設スタンドは無観客となった上に大会後撤去され、展示場に転用される有明体操競技場のように用途が変わるものもある。大会が盛り上がらなければ、付加価値のあるレガシーは残せない。スポーツ庁は全国でのアリーナ整備計画を進めている最中。国のスポーツ振興策を軌道に乗せるには、時間がかかるとの見方もある。