2021-07-12 09:37

五輪招致の闇、東京も=JOCに衝撃、会長交代―五輪、迷走の8年(3)

 矢継ぎ早の質問に答えるその表情は、こわばっていた。2019年3月19日。東京五輪招致の贈賄疑惑でフランス司法当局の捜査対象となった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、6月の任期満了をもって退任すると表明した。「未来を担う若いリーダーに託したい」と表向きの理由を説明したが、疑惑によって退任に追い込まれたことは明白だった。
 五輪招致委員会が13年にシンガポールのコンサルタント会社に約2億2000万円を入金した。この金が票集めに流れたのでないかと疑いの目が向けられた。同社は国際陸連前会長で国際オリンピック委員会(IOC)委員だったラミン・ディアク氏の息子パパマッサタ氏とつながりがあり、ラミン氏は開催都市決定の投票権を持つIOC委員に影響力を持っていた。
 招致にはIOC委員へのロビー活動が不可欠で、当時は委員にパイプを持つコンサルタントの活用は珍しくなかった。疑惑が明るみに出た16年、JOCが設けた外部調査チームは「支払いに違法性なし」と結論付けた。招致委の理事長だった竹田会長も潔白を主張。ただ、コンサル会社の代表者やディアク親子を直接調査はできず、全容解明には程遠かった。
 疑惑は19年1月に再燃した。竹田会長が仏司法当局の捜査を受けていたことが明らかに。本人は「支払いはコンサルタント業務に対する適切な対価。不正は何も行っていない」と釈明したが、質問を受け付けずに約7分間で会見を終えた対応にも批判が集まった。
 このような状況でも、19年6月に役員改選を控え、JOCの幹部は71歳になっていた竹田会長の続投にこだわった。会長周辺は「これで辞めたら、疑惑を認めたと思われてしまう」。しかし、IOCや政府内でも東京五輪のイメージ悪化を懸念する声が広がり、退任は避けられなくなった。
 01年から会長職にあった竹田氏は、晩節を汚す形でJOCを去った。関係者は「招致は国のプロジェクトだったのに、竹田さんが全部の責任をかぶった」と言った。招致をめぐる金銭の流れは依然として解明されておらず、今もなお疑惑はくすぶっている。