2021-06-21 20:09

根拠なく、ぶれる基準=「観客」判断も説明尽くさず―東京五輪〔五輪〕

 コロナ禍の五輪は東京と地方の全ての競技会場に観客を入れることになった。収容定員50%以内で1万人という上限基準に安全への根拠は示されず、無観客開催を推奨した専門家有志による提言は聞き流された。結論ありきで突き進む。
 4月に示すはずだった国内観客数の判断が開幕1カ月前までずれ込んだ。政府が緊急事態宣言解除を待ち、大会組織委員会は政府の基準に準じるとして主体的な判断を投げ出した。ようやく決めても基準はぶれ、先送りの部分も残した。
 IOCや競技団体、スポンサー関係者の入場について、組織委の武藤事務総長は「観客ではなく大会運営に参画する人」との認識を示し、上限とは別枠だとした。学校連携観戦プログラムによる児童生徒らも例外で「大会の意義を伝えることが大事」と言うが、ダブルスタンダードといえる。
 緊急事態宣言などが出されたら無観客もあり得るとしながら、詳しい条件は示さなかった。仮にそうなればチケット保持者に加え、医療や警備、ボランティアなどにも影響が及ぶ。無観客になった場合、別枠とした関係者の入場について、武藤氏は「認めるのも一つの考え方」とした。
 組織委内部でも「選手に特化して準備するべきだ」と無観客が妥当とする声がある。世論をかわしながら開幕間際まで結論を引っ張り、上限判断でカードを1枚切った。橋本会長は「最後のピースが詰まって舞台の骨格が完成した」と言ったが、説明は尽くされていない。