2021-06-21 21:09

「流行次第で五輪中止を」=自宅観戦を推奨―専門家

 新型コロナウイルス感染の「第5波」到来が7月にかけて予測される中、東京五輪に観客を入れることが21日、正式決定された。観客収容時には無観客と比べ感染者が累計1万人以上増えるとの試算もある。開幕を1カ月後に控え、専門家は流行次第では速やかな無観客への切り替えや、中止・中断の判断に踏み切るべきだと訴える。
 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長らは18日、五輪を「通常のイベントとは別格」と位置付け、無観客開催が望ましいとする提言を大会組織委員会などに提出した。一方、組織委などは21日、国内の大規模イベントの制限に準じて、1万人上限の観客収容を決定した。
 昭和大の二木芳人客員教授(感染症学)は「野球やサッカーと異なり、五輪は都内で同じ日に何カ所も会場が設けられ、興奮度や盛り上がりも圧倒的に高い。クラスター(感染者集団)の発生を完全に防ぐのは困難では」と話す。観客を入れるなら、互いの距離を十分に取ることや飲食・会話の禁止、トイレやグッズ販売所、公共交通機関の混雑回避策を徹底すべきだと指摘する。
 二木氏は「まん延防止等重点措置なら無観客、緊急事態宣言なら中止・中断へすぐにかじを切る必要がある」と強調。「国民の命や医療提供体制を守るのが最優先。観客を入れたいがために発令などをためらってはならない」と訴える。
 東京医療保健大大学院の菅原えりさ教授(感染制御学)は「観客1万人でも、マスク着用や飲食、会話の禁止などが徹底されれば感染リスクを下げることはできる。一生に一度かもしれない観戦を静かに楽しみ、観戦中やその後の飲食などリスクの高まる行為は絶対に避けて」と求める。
 会場外での観戦については、「スポーツバーなど人が集まる場所に行くのは駄目。今回の五輪は自宅で楽しんでほしい」と呼び掛けた。