2022-03-14 13:33

パラアスリートの訴え、届くか=競い合い、平和願う〔パラリンピック〕

 混乱の中で開催されたパラスポーツの祭典が幕を閉じた。ウクライナ侵攻の制裁措置として、ロシアと同盟国ベラルーシの選手は出場できなかった。46カ国・地域から集まったアスリートは懸命にプレーし、互いにたたえ合った。その姿が世界に訴え掛けたものは何か。
 ウクライナでは依然として戦火が激しさを増し、状況は悪化の一途をたどるばかり。戦災を逃れて何とか北京にたどり着いた同国代表の選手は母国を思わない日はなかった。軍人の父親がロシア軍に拘束され、直前にレースを棄権した選手もいた。厳しい心理状況にありながら、獲得したメダルの数は中国に次ぐ2位の29個。ウクライナの過去最多を更新した。
 ノルディックスキー距離で金メダルに輝いたコノノワは言う。「ベストを尽くしてメダルを取れば、インタビューを受けられる。平和をアピールして、ウクライナの状況を伝えられる。これは私たちにとってバトル」。どの選手もウクライナ代表としての誇りと平和への思いを口にした。選手村でロシアに抗議する異例の集会も開いた。
 ただ、ウクライナ勢のメダルラッシュは、強豪ロシア勢を打ち破って実現したものではない。努力を重ねてきたアスリートにとって、葛藤もあっただろう。一方で大会から除外されたロシア・パラリンピック委員会はスポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てず、選手たちは無言で中国を去った。
 ウクライナ生まれで米国籍を持ち、バイアスロンと距離スキーで7個のメダルを手にしたマスターズは、パラリンピックの意義をこう強調した。「どこから来たかは関係ない。スポーツができることを祝い、選手の頑張りを祝福する。助け合っている姿を多くの人が見てくれたら」。戦うのではなく、競い合う―。スポーツ界から発せられたメッセージは、為政者に届くのだろうか。