2022-02-21 07:06

王者の果敢な挑戦=生きざま刻んだ羽生〔五輪・フィギュア〕

 北京五輪で世界的にも注目選手の一人として挙げられたのが、フィギュアスケート男子の羽生結弦(ANA)だった。94年ぶりの3連覇が懸かり、さらに前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への挑戦も大きな関心を集めた。
 ショートプログラム(SP)はまさかの展開となった。氷のくぼみに足を取られ、4回転サルコーが1回転になって、3連覇がかすむ8位。4回転半成功へ集中は途切れず、フリーの冒頭で果敢に挑んだが転倒した。4位でメダルすら逃した。
 「皆さんの夢」とも受け止めていた4回転半は、羽生にとって「どうしても達成したい目標」だった。だが、壁はまだ高かった。回り切ることに最大の意識を置いても回転不足と判定された。
 「プライドを詰め込んだ五輪」。羽生は演技を終えて、そう表現した。練習でもきれいに降りたことがなかった4回転半を、3連覇が懸かった五輪で入れた。王者が失敗を覚悟で、五輪史上初となる大技への挑戦を決断。転倒しても「僕なりの4回転半はできていたかな」と言えた。
 金メダルをつかんだ2014年ソチ、18年平昌両五輪とは違い、北京から目に見える形として持ち帰れるものはない。思い入れの強い大技も決まらなかった。それでも、羽生の生きざまは人々の記憶に深く刻まれた。