2020-12-11 12:35

バッハ発言「ちょっと安易」=臨床スポーツ医学の山沢氏に聞く―コロナワクチン

 新型コロナウイルスの収束が見通せず、来夏の東京五輪・パラリンピックには開催可否に不透明感が残る。海外で一般への接種が始まったワクチンが与える効果とは。日本臨床スポーツ医学会副理事長で、医学博士の山沢文裕氏に見解を聞いた。
 英国で8日に接種が開始された米製薬大手ファイザー製のワクチンは、マイナス70度の低温で保管することが必要だ。日本陸連理事も務める山沢氏は、日本で認可された場合、まず輸送や国内での分配が大きな課題になると指摘。その上で、スポーツ選手への接種は「国立スポーツ科学センター(JISS)のクリニックにワクチンが分配されるのかどうか」がポイントだという。
 政府は医療従事者と高齢者への接種を優先させる意向。東京五輪・パラ開催のためにスポーツ関係者への接種を急ぐならば、「特例で国が考えること」(山沢氏)が必要になりそうだ。
 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が11月、参加者のワクチン接種を推奨する発言をしたことに、山沢氏は疑問を呈する。「ちょっと安易。医療状況についてきちんと相談してもらわないといけない」。現時点で開発されているワクチンは、副反応や接種後の有効期間について詳細が分からないことが多い。また、「私の理解では、今のワクチンは(感染予防ではなく)重症化予防ではないか。感染したら重症化しなくても他の人にうつしてしまう」と懸念する。
 ワクチンが完全な切り札となる見通しはまだ立たない状況。インフルエンザ治療薬タミフルのような有効な薬剤の開発に、山沢氏は期待を込める。「安全性の高いワクチンとウイルスに効く薬剤。予防と治療の二つがあれば五輪(開催)は問題ないと思う」と話す。