2021-04-14 21:02

今夏開催、横たわる難題=コロナ下、世論支持に説得力必要―東京五輪、100日前

 東京五輪開幕まで14日であと100日。聖火リレーが始まって大会機運が高まるとの期待もあったが、悪化した新型コロナウイルスの感染状況が再び影を落としている。今夏の開催実現には多くの難題が残る。
 3月に海外一般客の受け入れを断念した大会組織委員会は、4月中に国内観客数の上限について方向性を示す。国内で行われるプロ野球など他のスポーツイベントの上限に準じるのが基本だが、感染再拡大で適用された「まん延防止等重点措置」が東京大会の議論にも影響しそうだ。
 東京の神宮球場を本拠地とするヤクルト戦や六大学野球が、観客上限を5000人に抑えると表明した。組織委には上限を収容人数の50%とする案があるが、多くの観客を入れることに理解を得ることは難しくなりつつある。橋本聖子会長は「状況によっては無観客も想定しないといけない」と認める。
 観客上限の決定はチケット払い戻しの手続きやボランティア、警備、輸送などの計画に影響し、結論の先送りは避けたいところだ。1日最大約300人が必要と想定される大会時の医師数についても「現時点では正確な試算は難しい」(組織委)。全国でコロナ対応に追われる中、医療従事者の確保も急務となる。
 関係者別に感染予防策などをまとめた「プレーブック」の改訂は今月と6月に予定。選手向けはウイルス検査の頻度や個室確保が難しい選手村での感染対策、「偽陽性」の場合の手続きなどがポイントになる。
 ◇来日関係者も万単位
 4、5月に日本で予定されていた水泳などの国際大会は中止や延期に追い込まれた。政府の厳しい防疫措置で海外の関係者が円滑に入国できず、水際対策と大会開催を両立させる難しさを実感させている。東京五輪では競技運営やドーピング検査などに必要な人員、スポンサー招待客など数万人が来日する可能性がある。行動範囲を選手村などに制限しやすい選手とは滞在環境が異なり、「ルールを本当に守れるのか」と感染対策の実効性に不安を持つ声が上がっている。
 世界の一部地域ではワクチン接種が進み、来日する選手や関係者に接種方針を示した国も出てきた。国際競技団体の会合に最近出席したある競技関係者は「ワクチンがあれば自分も人も守れるという考えは、みんなが常識的に持っている。本心では、打たないで試合をするのはどうなのかと思っているようだ」と明かす。ワクチン副反応に対する不安が和らぐ中、接種を義務付けていない東京大会に懸念が広がらないような対策を示せるかが問われる。
 何よりも開催への大きな推進力となるのは、世論の支持。橋本会長は「収束の兆しが見えない中で、なぜ東京大会をやる必要があるんだという声はものすごく多い」と批判は受け止めている。コロナ前の日常が戻らない状況での大会にいかなる意義があるのか、強い説得力が求められている。