2021-03-25 16:25

「復興、まだこれから」=聖火リレーに思い複雑―福島・東京五輪

 東京五輪の聖火リレー初日にランナーが走ったのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被害を受けた福島県内沿岸部の市町村だ。「復興五輪」の象徴の一つとされるが、住民らは歓迎する一方で、「復興はまだこれから」と複雑な思いを抱えている。
 2017年3月に一部で避難指示が解除された浪江町では、飲食店が並ぶ中心部を聖火が通った。町に戻り居酒屋を営む50代男性は「まさか地元で見られるなんて、うれしい。新型コロナウイルスの影響で大変だけど、五輪が起爆剤になって(地域が)盛り上がるといい」と笑顔を見せる。
 南相馬市小高区に帰還し、スーパーで働く井戸川愛美さん(27)は「1年前は楽しみだったけど、延期してしまってからは…」と言葉少な。「少しずつ復興は進んでいるが、若い人が少ない。にぎわいが戻るにはまだこれから」と話す。
 全住民の避難が続く双葉町では、20年3月に営業再開したJR双葉駅前を聖火が通った。同町出身でいわき市に住む大沼貞一さん(68)は「古里は帰還困難区域が解除されていないし、(コロナ禍で)観客が入るかも分からない中で、『五輪と言われても』という気持ちはある」と明かした。