演技後に宇野が視線を上げた先で、ランビエル・コーチは拍手を送っていた。それを見て安心した様子でふうっと息を吐く。「一つ失敗は出たけど、成功したジャンプは納得できる」。師弟の思いは同じだった。
　クラシックの「オーボエ協奏曲」で、美しく舞った。冒頭の４回転フリップと後半のトリプルアクセル（３回転半ジャンプ）はスムーズに着氷。ともに出来栄え点（ＧＯＥ）で３点以上の加点を引き出した。４回転―３回転の連続トーループは二つ目の着氷でバランスを崩し、右手を付いた。それでも団体で取りこぼしたスピンとステップは最高難度のレベル４を獲得し、修正してみせた。
　団体で３季ぶりに更新したＳＰの自己ベストを、またも上回った。「手は付いたけど、それを補う加点があった」。ジャンプの質を高めてきた成果が、大舞台で出た。
　ランビエル氏は新型コロナウイルス感染のため、団体には間に合わなかった。６日の合流後にスピンとステップの改善点を指摘され、「そこを意識できた」。頼れる存在が好演を後押しした。
　平昌五輪の銀メダリストは、平常心でフリーに向かう。「完璧にできる確率は相当低いけど、いつも通りの自分を出すこと。それが目標」。苦しみ、もがいた４年間の思いを銀盤にぶつける。