2021-03-18 19:23

大会機運醸成に打撃=聖火リレー控え、また騒動―東京五輪

 東京で発令中の緊急事態宣言の解除が決定。25日からの聖火リレーで低迷する大会開催の機運を盛り上げたい関係者には、冷水を浴びせられた形になった。2月に引責辞任した森喜朗前会長の女性蔑視発言に続く、組織委員会責任者の不適切な提案。東京五輪のイメージがまた損なわれた。
 撤回されたとはいえ、大会のメッセージを伝える場にふさわしい開会式で、人間の尊厳を傷つけるような案が考えられていた衝撃は大きい。森氏の発言では、ジェンダー平等に対する理解不足が国内外で注目を集めた。女性の外見を演出素材に考えたと受け止められる今回も、大会の核となるビジョン「多様性と調和」の説得力にはマイナスだろう。
 週刊文春の記事に端を発した今回の問題では、他に不透明感が残る点があった。大会延期に伴う人件費増などで開閉会式予算が165億円と大幅に増えた一方で、佐々木宏氏は謝罪文の中で、五輪とパラリンピックの4式典を当初の5分の1の「10億円でやるよう言われた」ことを示唆。組織委の武藤敏郎事務総長は「執行する受託会社の予算の範囲内で運用されている」と述べたが、詳細は明らかになっていない。また、演出振付家のMIKIKOさんが2019年ごろから五輪式典の執行責任者を務めていたことが初めて明かされ、その辞任の経緯も明確にされなかった。
 ジェンダー平等を重要施策と位置付ける橋本聖子会長は「問題を重く受け止め、どう改善できるか。歓迎される東京大会になるよう全力を尽くしたい」と述べた。だが新体制になっても不祥事が発覚し、疑問を残したままでは、開催に向けた一体感は容易に生まれない。