2021-03-07 16:59

危うさはらむ先送り=世論と機運、準備も―東京五輪

 聖火リレー出発4日前というきわどい時期まで、首都圏の緊急事態宣言が再延長される。五輪開幕は4カ月先とはいえ、機運醸成のための一大イベントが始まる節目。新型コロナウイルスの感染者数や変異株は予測できず、危うさをはらむ。
 懸案の観客については、海外からの受け入れ断念が今月中に決まる方向。開催への不支持が広がる国内世論を意識したとみられ、一方で国内の観客を含む上限数の判断は4月まで先送りした。コロナ感染の推移をにらんで観客を入れる可能性を先に残した形だが、影響が懸念される。
 大会組織委員会関係者によると、チケットは海外販売分と先に払い戻した分を除くと全体の5割程度が販売済み。観客数の上限を50%にしても人気競技などで再抽選が必要になるため、「判断が遅過ぎると実務に影響が出る」と不安を口にする。
 夏の感染状況が春の時点で予測した通りに推移せず、観客の扱いが二転三転すれば準備はさらに複雑になる。大会関係者は、国際オリンピック委員会(IOC)の思惑について「ともかく開催できればいい。無観客は覚悟している」と読む。
 900億円を見込むチケット収入はIOCの収支にほぼ影響しない。観客制限による減収分は組織委の予算で賄えず、最終的に国の負担になるとみられる。しかし、客席を含む仮設工事は再開しており、判断の遅れで支出が増えれば世論のさらなる低下につながりかねない。綱渡りが続く。