2022-02-16 07:07

見せた複合の醍醐味=渡部暁、白熱のレースで銅〔五輪・ノルディック複合〕

 見せたかったノルディックスキー複合の醍醐味(だいごみ)が詰まっていた。個人ラージヒル。渡部暁斗選手(北野建設)が終盤に激しく順位が入れ替わる展開の中で、見事に3位に入った。悲願の金には届かなかったが、3大会連続のメダルは複合で日本勢初の快挙となった。
 ジャンプとクロスカントリー(距離)のそれぞれに必要な能力を絶妙なバランスで備え、発揮しなくてはならないのが複合。17歳で初めて五輪に出場した渡部暁選手は、その世界で長年戦い続けてきた。
 「昔は、全然飛ばないけどとんでもなく走りが速いとか、スペシャルジャンプ(ジャンプ専門)ぐらいうまいけどすごく遅いという選手がいて、それはそれで面白かった」。近年はどちらかだけが突出した選手は減り、より両方の力が求められていると実感する。
 「全体でバランスを取れていないと戦えない。僕が求めてきたものが、世界的な流れになってきている」。この日はそれを証明するような試合。前半飛躍で大きなジャンプを飛んで表彰台を射程圏内に入れ、後半距離は経験に裏打ちされたレース勘を発揮した。
 後半をトップでスタートしたのは、新型コロナウイルス検査の陽性で直前まで隔離されていた優勝候補のヤールマグヌス・リーベル選手(ノルウェー)。前日、渡部暁選手は「本調子じゃないかもしれないけど、いるのといないのではだいぶ違う。出てくれたら面白くなる」と期待していた。
 まずは2番手集団に入って機をうかがう。追い付いてからはグループをコントロールするように前に出たり、後ろに回ったり。先頭集団が3人になった最終盤。後ろから来た2人にかわされたが、3位は死守してメダルを射止めた。
 「若い選手は結果を出そうとハングリーさを感じるけど、僕は重ねてきた年月から出るベテランの味を含め、レースをより楽しめる。そういうところだけは負けていない」。一つの道を究めようとするように、自らの技術と体力を磨いてきた日本のエース。白熱した一戦でのパフォーマンスは、多くの人を楽しませたに違いない。