2021-02-04 13:01

万能女王流の挑戦=スピードスケート高木美、初心に帰る―北京五輪、あと1年

 昨年末に行われたスピードスケートの全日本選手権。女子の高木美帆(日体大職)は大胆な決断をした。もともと中長距離を得意としているが、500〜5000メートルの5種目にエントリーした。
 スプリント力から持久力まで問われる挑戦。全レースに臨もうとした選手は男女ともに他にいなかった。結果は、平昌五輪金メダルの小平奈緒(相沢病院)を破った500メートルを含めて好記録を並べ、驚異の5冠。「走り切れたことにすごく達成感がある」
 北京五輪プレシーズンの今季、新型コロナウイルスの感染拡大で十分な試合数をこなせなかった。その代わりに、肉体の限界に迫ろうという試み。世界記録を持つ1500メートルだけではなく、オールラウンダーとして能力の高さも改めて示した。
 コロナ禍で今季は全ての国際大会への日本勢の派遣が見送られた。しかし、リンクの標高や気圧、氷の条件などにより出せる記録も左右される競技である以上、国外の有力選手とも実際に競い合わないと厳密な現在地を測ることはできない。
 そんな状況だったからこそ、国内最高峰の舞台でつかんだ5種目制覇は、世界を見据える女王のモチベーション維持にも必要なことだった。
 トップ選手になっても、常に初心に帰る。「可能性があるものは、どんどんやっていきたい。純粋に速くなりたい」。スケーターとしての本能に素直に向き合える心のゆとりに、それを支える体力と技術も持ち合わせている。北京五輪への死角は見当たらない。
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 2022年北京冬季五輪開幕まで、4日であと1年。東京五輪と同様、新型コロナの影響で先行きが見通せない中、メダル獲得の期待が懸かる3人の日本選手に焦点を当てた。