2022-01-07 18:01

【特派員リポート】北京五輪、コロナに厳戒=「内憂外患」封じ込め 中国総局 本間賢彦

 中国の首都・北京市を中心に2月4日から開催される北京冬季五輪が間近に迫った。折も折、中国本土では新型コロナウイルスの感染が相次ぎ、変異株「オミクロン株」も上陸。習近平指導部は至上命令とする大会成功に向け、最大の障害となっているコロナ対策に躍起だ。

 ◇現地は厳戒
 競技は北京市中心部、市郊外の延慶区、隣接する河北省張家口市の3地区で行われる。北京〜張家口は高速鉄道で約1時間。昨年12月下旬、張家口会場最寄りの太子城駅に到着すると、白い防護服姿の係員や警察官が待ち構え、乗客のPCR検査陰性証明書を確認する厳戒態勢を敷いていた。現地メディアセンターの費依氷主任は「最大の困難はコロナ禍の影響だ」と率直に語る。
 北京五輪は外部との接触を遮断する「バブル方式」を昨夏の東京五輪より厳格化し、選手らはバブル内から一切出られない。スノーボード・ビッグエアなどの会場、北京市の「ビッグエア首鋼」は1月1日、前倒しでバブル管理下となった。
 北京五輪は東京五輪と異なり、国内の観客を動員して中国のコロナ対策の優位性をアピールすることを目指す。しかし開幕約1カ月前の段階でチケットは販売されていない。ジャンプ台の建設担当者は「もちろんお客さんが入ることを望んでいる」と強調していたが、不透明感が漂う。
 共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は昨年11月、北京市のカーリング会場の観客数は座席の2割にすぎない1000人以下という見通しを伝えた。当局はバブルの穴となりかねない観客席の扱いを慎重に判断するとみられる。

 ◇重なる春節
 今年の春節(旧正月)は2月1日で、五輪が開幕する同4日は立春に当たる。北京五輪公式ガイド本によれば、偶然の一致ではなく中国側の意向が日程に反映された。新春と五輪、二つの華やぐ雰囲気が相乗効果を発揮する仕掛けだった。
 ところが開幕間際になって、20年1月にロックダウン(都市封鎖)された湖北省武漢市以来の規模で感染者が相次いでいる。1300万人都市の陝西省西安市は12月23日、事実上のロックダウンとなった。西安市衛生健康委員会によれば、9月までに国産ワクチンを2回打った市民の割合は12歳以上で94%に達していたにもかかわらずだ。
 北京、張家口両市は春節連休の里帰りを控えるよう市民に呼び掛けている。北京五輪の聖火リレーは感染対策を優先し、開幕直前3日間だけ会場周辺のみで行われ、東京五輪より小規模となる。
 一方、バイデン米政権は新疆ウイグル自治区の人権弾圧などを理由に、五輪に政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を表明。英国などの同盟国も続き、中国にとってはコロナ禍に加え「内憂外患」の様相を呈している。
 これに対し中国政府は「簡素」「安全」な大会運営のため大規模な「五輪外交」を行わない姿勢を示し、外交ボイコットに予防線を張ってきた。ロシアのプーチン大統領ら一部友好国首脳の出席を誇示し、米側陣営の「雑音」(趙立堅・外務省副報道局長)をかき消す構えだ。