2021-01-25 12:28

IOC、国内世論とのずれ顕在化=欧州でも厳しい見方―東京五輪、開幕まで半年

 【ロンドン時事】7月23日の開会式まであと半年となる東京五輪。世界中で新型コロナウイルスの感染者数と死者数は増え続け、収束の気配はない。日本国内の世論調査では、今夏の五輪開催に半数以上が否定的な立場を示す結果が出ている。
 国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、年明けに公式サイトでメッセージを寄せた。「五輪はトンネルの終わりの光となり、多様な人類の連帯や団結、回復力を祝う場になる」。前向きな言葉を繰り返したが、国内一般の意識とのずれは、日に日に開く一方という印象を与える。
 多くの国際競技団体が本拠地を置く欧州でも、厳しい見方が目立つ。年頭に「期待値は下がっている」と記した英紙ガーディアン(電子版)は、東京都などに緊急事態宣言が出された後、「疑わしさが加わった」と表現を強めた。ボート男子の元英国代表で五輪金メダリストのマシュー・ピンセント氏は、2024年に延期すべきだとの私見をツイッターで明かした。
 IOC内部でも懐疑的な見方はある。最古参委員のディック・パウンド氏(カナダ)が五輪開催について、「確定的なことは言えない」と話したと7日に英BBC放送(電子版)が報じた。同氏は昨年3月、東京五輪の1年延期が正式に合意される前にも「延期は決まっている」とメディアに話すなど、重大な決断が下る前に世論の反応を探るような言動があった。今回の発言は、IOCの方針がぐらつき始めたためとみる向きがあるが、本音が少し漏れただけとも受け取れる。
 東京五輪の代表枠は、IOCによると43%が決まっていない。今後の数カ月間、世界各地で予定される各競技の五輪予選が中止された場合は代表選考が混乱し、日程通りの開催が不可能となるケースも想定できる。
 大会の象徴となる聖火リレーは3月25日、福島県で始まる。史上初の延期が決まってから約1年後となるこの日は、開催可否の最終判断が下るリミットになり得る。