2021-01-25 18:19

東京五輪、今夏開催に厳しい観測=「ワクチンなし」にも危機感―米国

 【ニューヨーク時事】東京都の新型コロナウイルス感染者数が急増した年明けから、米国メディアは今夏の五輪開催を懸念する声を次々に伝えた。15日には有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が「不確実性が増している」と中止の可能性に言及。開催のカギを握るスポーツ大国から、厳しい見方が出始めた。
 米国では国内の感染者数が2000万人を突破。昨年12月にワクチン接種が始まったが、普及のスピードは政府の計画から大きく遅れている。深刻な感染拡大は続いており、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)を筆頭とするスポーツ団体は「(接種を待つ)列の割り込みはしない」と強調。五輪参加のために選手が優先的に接種するプランには、関係者内でも否定的な意見が目立つ。
 USOPCで医務部門の責任者を務めるジョナサン・フィノフ氏は、米メディアの取材で「開幕までに接種が受けられるのは、世界的に見ても一部だろう。東京五輪は『ワクチンなしの大会』と考えないといけない」と主張。予定通りに7月開幕が実現しても、選手らが接種を完了しているとは思えないとの見解を示している。
 さらにコロナ禍は、五輪の価値そのものにも影を落としている。国際オリンピック委員会(IOC)で収入の約7割は放映権料。中でも巨額の契約を結ぶ米NBCテレビはIOCに大きな影響力を持ち、昨年3月の1年延期決定にも意向が反映された。これまでメダルラッシュで視聴者を熱狂させてきた米国で、今夏の開催を疑問視するような世論に傾けば、選手や団体から不参加の声が出る可能性もある。米国の動向次第で、東京大会は再び危機に立たされる。