2021-09-05 15:32

東京パラ・識者談話〔パラリンピック〕

 ◇「社会モデル」広がらず
 全盲の障害がある星加良司東京大准教授(障害学)の話 新型コロナウイルス禍の中、無観客とはいえ東京でパラリンピックが開催されたことは良かった。ある程度の放送時間が確保され、スポーツとしての正当な報道もなされた印象だ。障害者の露出が増え、関心を持つ人の入り口が広がったと言える。
 ただ、パラリンピックにはもともと、困難を努力で克服したというストーリーを強調しやすい危うさがある。残念ながら、障害を個人ではなく社会の側の問題と捉える「社会モデル」が広がる契機にまではならなかったように思う。パラリンピックを卓越したアスリートによるスポーツイベントとして受け止めつつ、共生社会に向けたどんな課題とメッセージを受け取るのかが、私たちに問われている。
 ◇関心持ち続けて
 スポーツライター・星野恭子氏の話 以前から「オリパラ一体」がうたわれてきたが、五輪閉会式で初めてパラリンピックにつながる演出がされ、一体化の意識が深まった。過去大会では選手村のスロープが五輪の後に突貫で設置されるなど、取って付けたような設備が多かった。今回は初めからバリアフリー仕様だった。障害者の利用を想定して造っておけば誰もが使いやすくなる。それは社会全体にも言える。
 パラスポーツを初めて見て、知らない世界があると気付いた人がこれまでになく多かっただろう。関心をここで終わらせないでほしい。パラアスリートはできないことを諦めず、いろいろな工夫をしていた。障害の有無にかかわらず誰もがコロナ禍で直面する困難を工夫して乗り越えていくヒントになればいい。