2021-09-04 20:32

パラの「レガシー」に期待=聴覚や知的障害の国際大会―周知の好機逃したと懸念も

 東京パラリンピックは5日に閉会する。高まった障害者スポーツへの関心を、共生社会実現に向けた「レガシー(遺産)」となし得るかが課題だ。「聴覚障害者の五輪」と呼ばれるデフリンピックなど、他の国際大会の関係者は波及効果を期待するとともに、先行きへの懸念を口にする。
 デフリンピックと知的障害者のスペシャルオリンピックス(SO)はパラ同様、国際オリンピック委員会が名称使用を認めた大会。しかし、国内の知名度では大きく離され、東京都の2020年調査では、パラの認知度95.1%に対し、デフリンピックは5.2%、SOは5.8%だった。
 「国民的な関心と支援が寄せられる好機を生かしたかった」と話すのは、全日本ろうあ連盟スポーツ委員会の倉野直紀事務局長。パラを機に関連イベントで知名度を上げ、デフリンピック25年大会の日本招致の機運につなげる青写真を描いていたが、コロナ禍で中止せざるを得なかった。「千載一遇の機会を逃した」と悔やむ。
 デフスポーツは、号砲の代わりにランプでスタートを知らせたり、球技では身ぶりや視線で意思疎通したりといった特徴がある。ただ、「見た目では難しさが伝わりにくい」のが悩みだ。
 デフリンピックの存在を知らなかったために、卒業などで競技を引退する選手もいる。「選手発掘や聴覚障害者の環境改善に、日本で開催する効果は大きい」と語る倉野さん。「オリパラ後にも理解が得られるか」と気をもむ。
 SOは知的障害者にスポーツの機会を提供し、自己成長を促す活動全体を指し、競技会や国際大会はその成果発表の場という位置づけ。順位はあるが、全参加者をたたえて表彰する。SO日本の有森裕子理事長は「時間をかけて徐々に理解を得てきた。パラに影響されず、安定した運営をすることが基本姿勢」と語る。
 ただ、今後の情勢には危機感もある。「関心は今がピークという懸念を現実にしてはいけない。パラの選手や関係者には一層奮起してほしい」と有森さん。「パラの選手に多い身体障害は、誰もが将来なる可能性がある。そこからでも理解が広がれば、いずれ知的障害者を含む全体を助ける流れになる」と期待した。