2021-08-09 20:33

酷暑への対応遅く=割を食ったアスリート〔五輪〕

 コロナ禍で強行開催された東京五輪には感染対策のみならず、酷暑への懸念が付きまとった。大会期間中は暑さが厳しくなるとの予報も取りざたされていたが、大会組織委員会など運営側の対応は遅く、割を食ったのはアスリートだった。
 大会終盤、札幌で早朝スタートの女子マラソンが急きょ1時間繰り上がった。決定は前夜。既に寝ていた選手もいた。組織委幹部は「札幌が想定より暑く、東京とあまり変わらなかった」と言ったが、最悪の事態を想定しておくべきだった。
 大会関係者によると、視察で札幌入りした世界陸連のコー会長が現地の暑さを懸念し、午前5時に開始を早めるよう提案したという。札幌移転から約1年半も準備を重ねた現場の担当者は抵抗したが、結局は6時に前倒し。選手のみならず、スタッフやボランティア、警備にも影響が及んだ。
 サッカー女子は午前11時開始の決勝が午後9時に繰り下がり、会場も国立競技場から横浜国際総合競技場に変わった。8月3日にチームから要請があったのに、決めたのは試合前日の5日夜。組織委の広報責任者は「観客がいたら厳しい判断だった」と認めた。女子決勝との重複を避けるため、男子3位決定戦の日本―メキシコは2時間繰り上がり、エース久保建英は「勝って文句を言いたかった」と不満を隠さなかった。
 テニスは開始が午後3時に繰り下がった。男子の準々決勝、女子は準決勝があった6日目から変更。関係者によると、1日の試合数が減って消化の見通しが立ったこともあった。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)らトップ選手が声を上げて時間を動かしたが、序盤は昼の暑さに苦しむ選手が相次いだ。
 大会の開催時期や過密日程に根源的な問題があるにせよ、夏の酷暑は分かっていた。それだけに運営側の備えが甘かったと言わざるを得ない。