2021-08-08 23:00

制限下の五輪、笑顔で幕=「ありがとう」選手の思いは〔五輪〕

 国立競技場のフィールドに、四方の入場口から順不同で入って来る選手たち。マスクを着けて写真撮影を楽しんだり、踊ったり。心なしか控えめに見えるのは、コロナ禍で制限の多い大会を過ごしてきたからだろう。
 戦いを終えた各国のアスリートが、大都市東京の公園をイメージして用意された空間に集まった。厳しい感染対策が取られ、行動制限があった大会。競技前後の観光もできなかった彼らにとっては、わずかでも東京の雰囲気を楽しめる場となったかもしれない。
 1964年東京五輪では、整列して入場するはずだった各国選手団が入り乱れて入って来た。結果として「平和の祭典」を象徴するような場面となり、その後のスタンダードとなった。57年後。スタンドには関係者だけ。にぎやかなお祭りのような雰囲気にはできないコロナ禍の東京五輪となったが、大会に別れを告げる式典を楽しむ選手の笑顔は同じだった。
 アーティスティックスイミング日本代表のメンバーは「開催してくださりありがとうございました」と書いた大きな日の丸を掲げた。式典に参加できなくても、SNSなどで大会関係者やスタッフに感謝の言葉を述べる選手が相次いだ。開幕前から課題ばかりが指摘され、大会中も感染症の懸念は横たわっていた。それでも大舞台で選手は輝き、閉幕の日を迎えた。
 聖火は消され、大型スクリーンに「ARIGATO(ありがとう)」の文字。「SAYONARA(さよなら)」の表示で余韻を残した64年から時代は移った。人々の思いが全く変わってしまった大会は終わった。