2021-08-08 18:12

女子メダル数が急増=山口香さん「確実な手応えに」〔五輪〕

 東京五輪は競技の全日程を終え、日本は史上最多のメダル58個、うち金27個を獲得した。際立ったのは女子の躍進。日本オリンピック委員会(JOC)元理事で女性スポーツ専門部会長を務めた山口香さんは「以前から成果が出る兆しがあり、確実な手応えになった」と話す。
 混合3種目を除いたメダル総数は女子30に対し、男子は25。2000年シドニー大会以来、5大会ぶりに女子が上回った。金は04年アテネ大会を五つ上回る14。12の男子をしのいだのは5大会連続で、総数と金の両方で優位なのは初めてだ。
 山口さんは「この10年で女子選手の環境が改善されたのが一つの要因」とみる。11年にサッカー日本女子代表がワールドカップ(W杯)で初優勝した際、男子より練習環境や待遇で劣る点がクローズアップされた。これを契機に「強化の取り組みが変わった」と言う。
 海外選手との体格の差は男子より影響が少ないとされ、女子に特化した強化が重視され始めた。バレーボールの中田久美、卓球の馬場美香両監督らトップ選手だった女性指導者も増加。13年度からは「女性アスリートの育成・支援プロジェクト」が始まり、出産前後の心身両面を支える体制づくりも進めている。
 日本選手団の女子比率は64年東京五輪の2割弱から、5割近くに増えた。今回のメダリストの顔触れは多彩。柔道の阿部詩(日体大)は力強さ、競泳で2冠に輝いた大橋悠依(イトマン東進)は精神力のタフさを印象付けた。22歳の稲見萌寧は男女を通じてゴルフ競技初のメダルを獲得し、新種目のスケートボードでは西矢椛(ムラサキスポーツ)が13歳で日本最年少の金に輝いた。時代は確実に移り変わった。
 「女子の可能性は今後も広がる。ママさん選手が珍しくない時代にも期待したい」と山口さん。女子の隆盛はスポーツ界の底上げと、多様性ある社会の醸成につながる。