2022-01-28 09:37

バブル内は「幸せな囚人」=北京五輪の現地ルポ

 2月4日に開幕する北京五輪取材のため、時事通信の運動部記者が1月23日に中国入りした。空路北京に降り立ち、祭典が開かれる市内へと移動して目にしたものは―。
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 大会関係者しか搭乗していない空席だらけの航空機で北京首都国際空港に到着した。全身真っ白な防護服姿の作業員が小窓の外に見える。その時、日本よりも厳格な新型コロナウイルス感染対策の世界に入ったことを実感した。空港内は入国管理官やウイルス検査官、案内係に至るまで、目に入る全員が防護服を着ていた。そんな場所で、マスクを着用しただけではどこか居心地が悪い。しかし対応は親切で、専用のバスで北京市内のホテルまで移動できた。ただ、車内に充満する消毒液の臭いは強烈だった。
 大会関係者は「クローズド・ループ」と呼ばれる区域内でしか行動できない。「外部」との接触を遮断する、いわゆるバブル方式だ。「内部」に指定されたのは競技場や報道施設、指定されたホテルと移動車両ぐらい。建物は高い壁や鉄柵に囲われ、何人もの公安が周囲を監視している。この徹底ぶりは「ゼロコロナ」政策を続ける国の意向が強く反映されている。
 同じくバブル方式が採用された東京五輪は、海外からの入国者でも一定の隔離期間がたてば自由に外出できた。「穴の空いたバブル」と批判されたが、北京五輪のバブルは「泡」というより「見えない壁」といったイメージだ。食事などの生活面に不自由はないものの、鳥籠に押し込められたような息苦しさがある。「私たちは『ハッピー・プリズナー(幸せな囚人)』なんだ」。バスで乗り合わせた英国の報道関係者が雑談の中でつぶやいた。「うまいことを言うね」と返した。
 東京大会で数日置きだったPCR検査は毎日行われ、マスクも高性能でなければならない。公共交通機関の利用は原則禁止だが、北京市とスキー競技などが行われる張家口との間約200キロは高速鉄道で行き来できる。駅の待合室で、検査官がいすや机の表面を綿棒でこすってウイルス検査液に入れる場面を目にした。あらゆる場所から「見えない脅威」を探し出して感染拡大を防ごうとする様子には、「何が何でも大会を成功させる」という中国一丸の強い意志を感じた。 (北京時事)

〔写真説明〕北京首都国際空港に到着した大会関係者を迎える、防護服を着た案内係のスタッフ=23日、中国・北京