2021-09-18 07:11

リスク隣り合わせの完走=コロナ下開催の「実績」―オリパラを問う

 東京五輪・パラリンピックは新型コロナウイルス対策を施し、日程の打ち切りや大半の選手が棄権するような事態を回避した。五輪の選手だけで1万人超の大規模イベント。外部との接触を遮断する「バブル方式」の徹底が困難だった事実は浮き彫りになったが、重層的な対策を講じての開催そのものは可能だった。
 大会組織委員会に助言する専門家会議のメンバー、斎藤智也・国立感染症研究所感染症危機管理研究センター長は一定の評価を下す。「提案したことは実行された。対策が何とか機能して、運営に響くような大きなクラスターの連鎖などはなく、その部分は非常に良かった」。7月初めから9月5日のパラ閉幕までに検査で陽性となったのは約850人。東京都や日本全国の新規感染者数の推移と比較すれば、感染拡大は起こさなかった。
 ただ、ボランティアや全国各地から集まった警備や物品搬入などの業務委託スタッフは「バブル外」。健康管理アプリなどで対策は取られたが、「安全安心」の担保には疑問が残った。斎藤氏は「自主的な管理に委ねられていたが、よく協力してくれたと思う」。結局は参加者の意識次第という側面があり、「リスクと隣り合わせだったというのは忘れないでほしい」と強調する。一般市民の感染対策の意識や、どの程度人の流れが増えたかなど、開催の影響についても検証は必要だろう。
 公衆衛生学者で相馬市新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター長の渋谷健司氏も、ワクチン接種率が高く連日検査も受けた選手らについては「感染をおおむね抑えられた」。しかし選手村の外には問題を指摘。「バブル外での行動で感染した例が多いのではないか。都内で集団生活をしたり、密な状態で職務に当たったりした関係者も多数いたようだ」
 来年2月の北京冬季五輪では、ワクチン接種済み証明書などを活用した観客受け入れが検討されるかもしれない。斎藤氏は「接種したからウイルスに感染しない、と言い切るのは難しい状況」と話す。コロナ下でも開催可能という楽観よりも、厳しい対策をしても感染拡大リスクが伴うという危機感を、教訓にするべきだろう。