日鉄、米印に成長の源泉=USスチール買収、戦略のカギ
日本製鉄は、米鉄鋼大手USスチールの買収計画の中止を命じたバイデン大統領の決定に対し、法廷闘争を含め抵抗する構えだ。背景には、急激に縮小する国内市場や飽和状態の中国市場に見切りをつけ、米国やインドを新たな収益の源泉に据える日鉄のグローバル戦略がある。その中でもUSスチール買収は米国での生命線で、戦略の成否のカギを握っている。
日鉄は国内での鉄鋼需要減退を受け、東日本製鉄所鹿島地区での高炉休止など生産能力削減を断続的に進めている。海外でも、鋼材の過剰生産や日系自動車メーカーの苦戦が響く中国で、宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄との合弁事業を解消。韓国でもポスコホールディングスの保有株式すべてを売却すると決めた。
一方、経済成長に伴う鉄鋼需要拡大が続くインドでは、欧州鉄鋼大手アルセロール・ミッタルとの合弁会社を通じ高炉新設など大規模な設備投資を決定。これに続くグローバル成長戦略の仕上げと狙ったのがUSスチール買収だった。
米国ではエネルギー価格が安く、日鉄が得意とする高級鋼板の需要が自動車向けなどを中心に安定的にあり、市場規模も大きい。買収後に技術移転を進め、インドと共に成長を支える拠点とする計画だ。
日鉄は米独禁当局の審査に万全を期すため、買収が実現した場合、米アラバマ州で自動車用鋼板などを製造するAM/NSカルバートの全保有株をアルセロール・ミッタルに譲渡する契約も結んだ。買収が破談となれば、日鉄は米国での一連の戦略を大幅に見直す必要に迫られる。
[時事通信社]
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