サッカーでホームレスなくせ=代表背負い「W杯」へ―自立支援、偏見解消目指す
決まった住居を持たないホームレスの人々が世界各地から集い、国・地域を代表してストリートサッカーで競う「ホームレス・ワールドカップ(W杯)」が今年9月、ソウルで開催された。自立支援や市民の理解促進を図るのが狙い。大会創設者のメル・ヤング氏は「彼らの生活を変え、長期的にはホームレス状態の人をなくすことが目標だ」と強調する。
◇初白星で自信
19回目となった今年の大会には、日本が13年ぶりに出場し、10~60代の選手8人を派遣。試合では、年齢も技術も異なる選手が声を掛け合いながらコートを駆け、ゴールを決めると抱き合って喜んだ。
「刺激的な経験で、わくわくした。誰もがボール一つで楽しめるのがサッカーの魅力」と振り返るのは、主将を務めた男性(25)。プロを目指したこともあったが、就職活動に失敗して困窮し、昨年から若者支援を行うNPOが運営するシェアハウスで暮らす。
今大会、日本はギリシャを8対4で下し、念願の代表初白星を手にした。勝利に貢献した男性は「戦い切れたことで、自信が付いた」。来春にはシェアハウスを出るが「厳しい状況も乗り越えられると思う」と胸を張った。
大会最高齢の出場者、山田裕三さん(66)は「同じ経験をできる人が増えてほしい」と話す。10年ほど前、介護離職後に家を失い、ホームレス支援雑誌「ビッグイシュー日本版」の販売者に。大会で刺激を受けたといい、「まだまだやることはたくさんある」と前を向いた。
◇出場がゴールじゃない
国連の推計では、不十分な住居環境で暮らす人は世界で約16億人。ヤング氏は「ホームレス問題は、かつてなく深刻化している」と警鐘を鳴らす。「ホームレスは社会から排除されて自尊心を失い、その状況から抜け出せなくなる」と説明。「サッカーはシンプルで世界共通。W杯で自信を取り戻すことは、社会復帰の準備につながる」と指摘した。
当初18カ国・地域だった大会規模は今年、38カ国・地域に拡大し、参加選手も144人から450人に増えた。ヤング氏は「世界の注目を集める大会を毎年開催し、影響力を高めたい」と意気込む。躍動する選手を見せることで、ホームレスへの偏見を少しでも解消し、寄り添う社会をつくりたい考えだ。
大会を主催する「ホームレスW杯基金」によると、2019年大会出場者への調査では、94%が「大会が生活に良い影響を与えた」と回答した。国内窓口であるNPO法人「ダイバーシティサッカー協会」の竹内佑一事務局長は「出場がゴールではない」と強調。継続的支援や孤立しないための居場所づくりが重要とし、「大会が本人のプラスになるよう後押ししたい」と語った。
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