K-POPファン、CDのCO2排出量削減求めて抗議運動
【ソウルAFP=時事】K-POPファンのキム・ナヨンさんは、「推し」の同じアルバムを何枚も購入し続けていた。ジャケットが異なるバージョンが発売されるたび、それぞれのバージョンに収められているレアな自撮り写真を手に入れたいと思っていたためだ。≪写真は韓国ソウルのショッピングモールで販売されている4種類のジャケットの「aespa」のアルバム≫
しかし数年が経過し、CDコレクションが自宅の棚を隙間なく埋めるようになるにつれ、環境への影響が気になり始めた。
「こうしたCDは、リサイクルがとても難しい素材で作られている」とキムさん。「生産や処分にどれだけの二酸化炭素(CO2)が排出されるのか、考えるようになった」
ポリカーボネートで作られるCDはリサイクル可能だが、有害ガスが排出されないようにする特別な処理が必要だ。
英国のキール大学が行った環境への影響調査によると、プラスチック包装を含め、CD1枚の生産につき約500グラムのCO2が発生する。
この計算に基づくと、トップK-POPグループの1週間当たりのCD売り上げでは、CO2排出量が「飛行機が地球を74周する量に相当する」とキムさんは指摘する。
■さまざまな特典
キムさんは、K-POP業界に環境への影響の責任を担ってもらうことを目指す気候保護団体「Kpop4Planet」に参加している。
2020年にインドネシアの1人のK-POPファンが始めた同グループは、音楽レーベルの本社前で抗議活動を行い、「プラスチックアルバムの罪」を改めるよう呼びかけている。
また、CD売り上げが伸び続ける中、プラスチック商品の生産や、消費をあおるさまざまなマーケティング手法に歯止めをかけるよう求める署名運動を行っている。
K-POPの2023年のCD売り上げは、初めて1億枚の大台を突破し、前年比50%増となる1億1500万枚超に達した。
大半のファンは、ストリーミング配信サービスで音楽を楽しんでいるが、それでもK-POPファンは、音楽レーベルのマーケティングにのせられてCDを購入し続けているとキムさんは言う。
レーベル側は、ファンにたくさんのCDを購入してもらう目的で、アルバムに限定版の「フォトカード」やアイドルとビデオ通話ができる抽選特典などを付けたプロモーションを展開している。
■搾取的なマーケティング
アルバムは、異なるジャケットのバージョンで複数リリースされることもある。
「こうした(販売)手法を私たちは搾取的なマーケティングと呼んでいる」とキムさん。音楽レーベルは、大好きなアーティストに対するファンの気持ちを「利用」していると非難した。
大人気グループ「BTS(防弾少年団)」の所属事務所HYBEはAFPに対し、同社は「環境イニシアチブの一環として、アルバム、映像出版物、公式グッズにエコフレンドリーな素材を使用し、プラスチックを最小限に抑えている」と主張したが、具体的な方策など詳細には触れなかった。
韓国のボーイズグループ「SEVENTEEN」が2023年にリリースしたアルバム「FML」は550万枚以上を売り上げ、K-POP単一アルバムとしては史上最多を記録した。
こうした状況を背景に韓国環境省は2003年、CDの製造と購入を抑制するための罰則を設けた。
環境省の担当者によれば、2023年にエンターテインメントレーベルに科された罰金は約20億ウォン(約2億円)に上った。
しかし、アルバム売り上げによる莫大(ばくだい)な収益に比べると微々たるもので、効果はほとんどなかった。
キムさんはレーベルを批判する一方で、応援しているアーティストに対して不買運動や排斥運動を起こすつもりはないと話す。
「アーティスト自身がマーケティング手法を把握したり、決定したりしているわけではないので」とキムさんは言い、「ファンはみんな、自分が推しているアーティストには活躍してほしいと思っている。ボイコットは選択肢ではない」と続けた。【翻訳編集AFPBBNews】
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