シリア北部で攻防激化=トルコが対クルド攻勢―米国との同盟関係に影も
【イスタンブール時事】アサド政権崩壊後のシリアで、隣国トルコが後押しする武装組織とクルド系武装勢力の攻防が北部で激化している。クルド系は米国が支援しており、北大西洋条約機構(NATO)で同盟関係にあるトルコと米国の関係にも影を落としかねない。シリアは首都ダマスカスなど多くの地域で戦闘が沈静化したが、安定には程遠い状況が続く。
シリア北部はかつて過激派組織「イスラム国」(IS)が占拠。その後、クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)が米国などの支援を受けて掃討作戦を繰り広げ、広範囲を掌握した。
ところが、アサド政権打倒を果たした旧反体制派の進攻に乗じ、親トルコ組織「シリア国民軍」(SNA)がSDFに対する攻勢を強化。北部で主要都市を次々と奪い、制圧領域を広げている。SNAはトルコ国境沿いの要衝であるクルド人の町アインアルアラブ(クルド名コバニ)への進軍をうかがっているとみられ、反発するSDFは19日、コバニの住民に徹底抗戦を促した。
攻勢の背景には、クルド系勢力に脅威を抱くトルコの強硬姿勢がある。トルコはSDFの中核部隊について、トルコ国内でテロを繰り返す反政府武装組織クルド労働者党(PKK)と一体の「テロリスト集団」と糾弾。過去に何度も、クルド系排除を名目にシリア領内へ越境作戦を仕掛けてきた。
トルコの狙いはSDFを国境地域から引き離し、「安全地帯」を設けることだ。トルコに残る推計約300万人のシリア難民の一部を安全地帯へ帰還させる道筋も描く。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、トルコが国境沿いで部隊を増強させていると報じ、大規模な侵攻準備との見方も出ている。
米国にとってIS駆逐で協力するSDFは「重要なパートナー」(国防総省)だ。一方、トルコのエルドアン大統領は「テロ組織は可能な限り早く壊滅させる」と主張。トルコ側には「(米国はSDFの)正体を見誤っている」(フィダン外相)との不満が強まっている。
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