渡辺恒雄さん、球界に絶大な影響力=研究心豊かな豪腕
プロ野球巨人のオーナーや会長を歴任した渡辺恒雄さんが19日に死去した。球団のトップという立場を超え、球界に絶大な影響力を持つ人物だった。
大胆な発言は、しばしば物議を醸した。2003年の原辰徳監督辞任時には「読売グループ内の人事異動だ」と表現し、野球を私物化していると批判された。04年、近鉄とオリックスの球団合併に端を発した球界再編問題では、当時の古田敦也選手会長(ヤクルト)を指して「たかが選手が」と言い、日本中の野球ファンを敵に回した。
ドラフト制度など意見が割れる問題があると、巨人のリーグ脱退と新リーグ結成をちらつかせることもあった。当時は莫大(ばくだい)な放映権料をもたらしていた巨人が抜ければ、他球団にとっては死活問題。こうした力関係を背景に、反対派を抑えながら、かじを切り続けた。
球団内でも豪腕を振るった。11年秋、「鶴の一声でコーチ人事にも介入し、球団を私物化している」と会見で批判した清武英利球団代表を解任。関連した裁判に自ら出廷して争うなど、常に読売グループの中心として存在感を示した。
野球のルールや技術については「ボークの意味が分からない」と言ったほどだが、球界の諸問題には精通していた。夕食はなじみのホテルで取ることが多く、帰り際を待ち受ける報道陣によく一席ぶった。お酒が入っていても、野球協約をそらんじて問題点を解説。元敏腕記者らしい機知に富んだ受け答えは、人を引き付ける魅力もあった。
あえて表に出て刺激的な言葉を発することで、自ら描くシナリオへ世論を誘導する。勉強不足のオーナーが多い中、誰よりもよく研究して持論を構築した。対外的にアピールしながら組織を動かす術は傑出しており、その力に多くの球界関係者が頼っていたことも事実だった。
[時事通信社]
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