難民帰還、受け入れに懸念=内戦で荒廃、新政府に負担―シリア
【イスタンブール時事】シリアのアサド政権崩壊を受け、国外に逃れたシリア難民数百万人が一斉に祖国帰還を目指している。ただ、13年以上にわたった内戦でシリアの社会基盤は荒廃。難民の帰国が暫定政府の負担となり、政情不安を招きかねないと懸念する声も上がっている。
国連によると、シリアでは内戦前の人口の半数近い1300万人超が家を追われ、約620万人が国外へ逃れた。
隣国トルコは、推計290万人超と最多のシリア難民を抱えているとされる。最大都市イスタンブールに住むサリフ・アルワヤさん(20)は「年末までにバイクなど私物を売り払い、(シリア北部)アレッポに戻る」と話す。シリアのバシル暫定首相もイタリア紙とのインタビューで「皆の助けが必要だ。自由になった国に戻ってほしい」と述べ、早期帰国を呼び掛けた。
支援団体によれば、トルコからシリアへの帰還者の人数は政権崩壊後5倍に増え、国境の検問所には連日長い列ができている。このためトルコ政府は、2013年に閉鎖した別の検問所を開放した。
一方、欧州ではシリアからの難民申請・審査を停止する動きが広がり、英独伊が既に実施に踏み切ったと報じられている。オーストリアのネハンマー首相は「欧州はシリア人の帰還を進め、再建を支えなければならない」と表明した。
外国人排斥を掲げる極右の台頭に直面する欧州各国が、現状を難民送還の好機と見なしている可能性もある。シリア国外の避難先では援助が減っており、難民に帰国を促す圧力が強まっているとされる。
しかし、受け入れ体制は貧弱だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、シリアでは人口の9割が人道支援に依存している。グランディ国連難民高等弁務官は「忍耐と警戒」を訴え、帰国時期を慎重に判断すべきだと指摘。トルコの難民支援団体の代表ジェンク・サルギョル氏も、シリアの行政基盤が安定するまで「(帰国には)リスクがある」と警鐘を鳴らした。
[時事通信社]
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