編成阻んだ移籍動向=松木は直前に辞退―サッカー五輪男子代表
パリ五輪メンバー発表前日の7月2日。選考作業が大詰めを迎えていた日本サッカー協会に、ある知らせが入る。チームの中心選手だった松木玖生(当時F東京)の「辞退」を伝える連絡に、少なからず衝撃が走った。
翌3日の五輪メンバー発表会見。あるはずの名前がなく、報道陣もざわついた。負傷か、チーム事情か―。当時はさまざまな臆測を呼んだが、山本昌邦ナショナルチームダイレクターが「五輪の期間に招集できる確約が取れなかった」と説明した通り、移籍交渉を優先したことが真相だった。
この問題は、松木に限ったことではなかった。五輪直前と本番になる6~8月は、欧州のオフ期間とプレシーズンに重なる。所属先が国内外を問わず、欧州での移籍を探る選手にとっては、慌ただしくも重要な時期。年齢制限のないオーバーエージ(OA)枠候補の選手も例外ではなかった。
候補には、遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティング)、板倉滉(ボルシアMG)らA代表の堂々たる顔触れが並んでいた。ただ、いずれも移籍の可能性がゼロではなく、先は見通せなかった。
五輪は実質18人登録。移籍交渉で1人でも離脱すれば、損失は計り知れない。「OAの活用は厳しい」。大岩監督はOA枠の移籍事情も踏まえ、早くから五輪世代のみでの戦いを覚悟し、実戦に臨んでいたと明かす。
活用しなかったのではなく、できなかったOA枠と、五輪世代も移籍を優先する時代。こうした背景とは無関係に、メダルの期待を背負う日本特有の五輪文化の中で、次のロサンゼルス大会へも歩んでいくことになる。
[時事通信社]
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