補正予算、ぎりぎりで妥協成立=「少数与党」最初の関門―政権運営の厳しさ浮き彫り
自民、公明の与党と国民民主党が2025年からの「年収103万円の壁」見直しで合意したことで、少数与党に陥った石破政権最初の関門とみられた24年度補正予算案の成立にめどが立った。来年の通常国会を見据え「自公国」の枠組みを維持したい与党と、「政策実現」を勝ち取りたい国民民主の利害がぎりぎりで一致した。ただ、与党は大幅な譲歩を余儀なくされ、政権運営の厳しさが改めて浮き彫りとなった。
「この合意で補正予算案は成立の見通しが立ったのではないか。国民民主に感謝したい」。自民党の森山裕幹事長は11日、自公国3党幹事長で合意文書を交わした後、ほっとした表情を見せた。
総合経済対策の裏付けとなる補正予算案を巡り、10月の衆院選で過半数を失った与党は国民民主との「部分連合」で成立させるシナリオを描いた。最大の焦点は所得税の負担が生じる年収ライン「103万円の壁」の見直し。国民民主が衆院選で掲げた看板政策だ。3党は11月中旬、政調会長間で「議論し引き上げる」ことで合意し、税調会長による協議をスタートさせた。
ネックとなったのは国・地方を合わせて7兆~8兆円と見込まれる税収減だった。全国の自治体から懸念が上がり、自民税制調査会も慎重論が大勢。これに対し、国民民主は25年1月から178万円に引き上げるべきだとの原則論を譲らず、受け入れなければ「補正に賛成できないかもしれない」(榛葉賀津也幹事長)と揺さぶった。
足踏みしていた状況が動いたのは11日だ。1回目の3党幹事長会談が事実上の物別れに終わった後、公明の西田実仁幹事長が自民本部を訪ねて自民幹部と協議し、「『178万円を目指し』でいいんじゃないか」と打開案を出した。
同席していた財務省幹部は「そうですね」と相づちを打ち、強硬だった宮沢洋一税調会長も「『目指し』ならいい」とうなずいた。「来年から」の引き上げやガソリン暫定税率廃止の明記も決まり、補正予算案の成立が確実になった。
会期末が21日に迫る中、国会では政治資金規正法再改正や衆参政治倫理審査会開催など難題が山積し、日程は窮屈さを増している。自民にとっては補正予算案の12日中の衆院通過が目標だった。立憲民主党の修正要求を一部受け入れたのも、12日の採決を確実にするためだったとみられる。
もっとも、自公国の協調が続くかは見通せない。来年の引き上げ幅を含め、どのような道筋で「178万円」を目指すかは今後の協議に持ち越され、国民民主幹部は「油断できない」と疑いの目を向ける。公明幹部は178万円の実現時期について「20年代中だ」と話す。
与党過半数割れの下、かつて首相官邸も口出しできない「聖域」とされた自民税調の衰退ぶりは顕著だ。宮沢氏は記者団に「釈然としない感じは正直言ってある」と不満をあらわにした。「悔しいが仕方ない。これが少数与党だ」。自民幹部はあきらめ顔で語った。
[時事通信社]
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