猛暑対策の新銀傘着工=甲子園球場、次の100年にらむ
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で、このシーズンオフからアルプススタンドを覆う「銀傘」拡張に向けた準備工事が始まった。新たな銀傘が外野方向に延びると、一、三塁側のアルプス席の7割を覆う。全国高校野球選手権大会では、球場の外周で待つ観客にも日陰を提供するなど、猛暑の夏場に大きな効果を発揮しそうだ。
本格的な工事は来オフから始まり、2028年3月の完成を予定。かつては「大鉄傘」と呼ばれた巨大な屋根が内野からアルプス席までを覆っていたが、太平洋戦争中に金属供出で撤去された歴史を持つ。
甲子園を所有する阪神電鉄の谷本修取締役は「今回の銀傘は素材も新しく、太陽光発電パネルも載せる。できるだけ未来に備え、今できることは全部やっていこうという考えだ」と話す。
銀傘の拡張は観客の暑さ対策が発端。電鉄本社は2017年から3年間、夏の甲子園大会で、緊急搬送された人数などを調査。具合が悪くなった人の割合はアルプス席と外周で全体の約3分の2を占めたことから、計画が具体化した。
球場長やプロ野球阪神の球団本部長を歴任してきた谷本氏は11月下旬、応援歌「六甲おろし」の冒頭にも出てくる六甲山を歩いてきた。「トレイルエリアに入り、土と葉っぱを踏むと体にも楽で人間らしく生き返った感じがする」という自然が名物球場に通じるものがあるという。
今夏の甲子園大会は午前10時に決勝が始まり、閉会式は午後0時半ごろからだった。「土のグラウンドだから、それほど暑さを感じなかった。六甲山で土を踏みしめた時の感覚に似ている。将来が大事な高校生がプレーするグラウンドの良さを残していきたいし、サステナビリティー(持続可能性)もすごく大事になってくる」と話す。
高校野球の「聖地」でもある甲子園は、この夏に開場100年を迎えた。次の100年を見据えた施策が打たれる伝統の球場は、どんな歴史を紡いでいくのか。
[時事通信社]
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