駐米豪大使、トランプ氏批判の投稿削除=原潜配備・自由貿易推進に懸命
【シドニー時事】米大統領選でのトランプ前大統領の勝利を受け、オーストラリアのケビン・ラッド駐米大使(元首相)が過去にSNSなどに投稿したトランプ氏への批判を削除した。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく原子力潜水艦の豪軍配備計画や、関税障壁のない自由貿易を推進するため、摩擦の火種を懸命に消そうとしている。
ラッド氏は大使就任前、トランプ氏を「史上最も破壊的な大統領」「西側諸国への裏切り者」などと痛烈に批判。トランプ氏は3月、メディアの取材に「彼が敵対的であるなら、(大使職に)長くいられないだろう」とけん制していた。
アルバニージー首相は、外交官出身で与党・労働党の重鎮でもあるラッド氏が「素晴らしい仕事をしている」として、大使を続投させる方針だ。ラッド氏は7日、声明で投稿削除の理由について「一連のコメントが大使の立場や豪政府の見解を反映したものだと誤解されないようにするため」と説明した。
AUKUSはバイデン政権下の2021年に結成された。豪政府は米原潜購入や次世代型原潜の共同開発の計画を着実に進めたい考えだが、トランプ氏がこの先、豪州に費用負担増などの要求を突き付ける可能性は否定できない。一方、トランプ氏が主張する輸入品への追加関税を巡っては、豪産業界で「国内経済への打撃になる」との懸念が広がる。ラッド氏がトランプ次期政権と厳しい交渉を強いられる場面も出てきそうだ。
豪シンクタンク、ローウィー国際政策研究所のマイケル・フリラブ氏は「新政権に対して批判的にも迎合的にもならず、現実的に向き合って穏当な解決策を見いだすべきだ」と説いている。
[時事通信社]
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