公明、窮余の重鎮登板=衆院選大敗、世代交代棚上げ
公明党は、衆院選での石井啓一代表の落選を受け、ベテランの斉藤鉄夫国土交通相(72)を新たな「党の顔」に起用する方針だ。自民党を合わせた連立与党の過半数割れで政局が流動化する中、世代交代を棚上げして「安定性」を優先させた。党勢の退潮ぶりも改めて突き付けられ、立て直しに向けた課題は山積。手腕が早速問われそうだ。
石井氏は、在任15年に及んだ山口那津男前代表の後継として、約1カ月前に就任した。比例代表との重複なしに初挑戦した埼玉14区での落選は「想定外」(党関係者)の事態。新代表の人選は斉藤氏や、中堅の代表格と目される岡本三成政調会長に加え、山口氏の再登板も取り沙汰される混迷模様となった。
決め手となったのは当選11回を重ね、自民中枢を含め与野党に人脈を有する斉藤氏の政治経験だ。島根県出身で、隣り合う鳥取県が地元の石破茂首相とはかねて親交がある。石破政権の後ろ盾となった岸田文雄前首相とは、同じ広島県選出で初当選同期の間柄。国交相の在任期間が3年を超え、各省庁ともパイプを築いている。
自民は政権維持に向け、衆院選で28議席と躍進した国民民主党との「部分連合」を目指し、接触を活発化させている。一方、公示前から8減の24議席と後退した公明では、安全保障政策など方向性の異なるテーマで自民と長年渡り合った北側一雄元国交相も引退。「小政党が冒険する余裕はない。政治的資源を活用しなければ埋没する」。党幹部は斉藤氏の起用理由をこう解説する。
支持母体・創価学会の高齢化が進む中、衆院選の比例代表は、得票数が600万票を割り込み過去最少になった。小選挙区も、「常勝」を誇った大阪府でホープと期待される中堅が相次ぎ落選。「人材不足」の指摘が党内にくすぶり、一部で「国交相ポストを手放すべきではないか」(関係者)との声も漏れる。
「緊急登板」の性格が色濃い重鎮の起用だが、党を取り巻く厳しい環境は今後も続きそうだ。党幹部は「次の見通しがあるわけではない」と言葉少なに語った。
[時事通信社]
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