政局不安、金融正常化に影=日銀総裁は再利上げ模索
衆院選での与党過半数割れは、日銀が進める金融政策の正常化に影を落としている。日銀は7月の決定に続く利上げのタイミングを模索するが、政局不安が強まれば、より慎重に判断せざるを得なくなる可能性もある。
「経済・物価見通しが実現していけば、金融緩和の度合いを調整していくという基本的姿勢を堅持する」。植田和男日銀総裁は、31日の記者会見で政局の不安定化が金融政策に及ぼす影響を問われたのに対し、あくまでも2%の物価目標を実現できるかどうかという観点で判断する考えを示した。同日公表した最新の景気予測「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は、物価上昇率が2026年度までおおむね想定通りに推移するとのシナリオを示した。
植田氏はさらに、米国経済の下振れリスクは和らいだとの見方を示し、利上げの判断について、従来の「時間的な余裕はある」との表現は「不要になる」と強調。引き続き正常化を進める姿勢を鮮明にした。
ただ、この先の日銀の政策運営は必ずしも視界が良好だとは言い難い。衆院選で大敗した自民党と政策協議を進めることで合意した国民民主党は選挙戦で、積極財政と日銀の金融緩和を継続して「賃金デフレ」から脱却すると主張した。
国民民主の玉木雄一郎代表は7月の追加利上げ決定直後、「時期尚早だ」と批判していた。キャスチングボートを握る同党の発言力が増すのは確実とみられており、日銀の利上げ判断に影響が及ぶ恐れがある。
政府関係者の一人は「米大統領選の行方など不透明要因がある中、日銀の利上げペースはこれまでよりゆっくりになる可能性もある」と指摘する。ただ、利上げを先送りして円相場が急落すれば輸入インフレが再燃しかねず、日銀は難しい判断を迫られそうだ。
[時事通信社]
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