2024-10-26 05:15社会

父「詩織の思い引き継ぐ」=桶川ストーカー殺人、発生25年―埼玉

猪野詩織さんの父憲一さん(左)と母京子さん。自宅には詩織さんの写真と共に、好きだったヒマワリやキャラクターグッズなどが飾られている=21日、埼玉県上尾市

 埼玉県桶川市で1999年10月、大学生猪野詩織さん=当時(21)=がストーカー被害の末に殺害された事件から26日で25年となった。ストーカー被害の撲滅に向けて講演を続ける父憲一さん(74)は「一日一日が過ぎ去っていくことに変わりはないが、詩織の思いは私が引き継いでいく」と語る。
 詩織さんは元交際相手の男らから半年以上にわたってストーカー行為を受け、自宅周辺には数百枚の中傷ビラが張られるなどした。名誉毀損(きそん)容疑で県警上尾署に告訴したものの、担当警察官は調書を「届け出」に改ざんした上、取り下げを要請。ほとんど放置されている間に、刺殺された。
 母京子さん(74)によると、「家族を大事にするし、友達がすごく多い」という詩織さん。「だから悔しい。娘をこんな形で亡くすなんて」。さらに事件後は、マスコミ報道が過熱。きちんと裏付けを取らないまま、詩織さんの名誉を傷つけるような報道もされた。
 こうした中、憲一さんと京子さんは、二度と同じような思いをする被害者が出ないようにと、ストーカー被害の撲滅と犯罪被害者の権利確立に向けた取り組みを続けている。
 京子さんは2000年に結成された「全国犯罪被害者の会(あすの会)」(解散)に参加。切実な訴えは犯罪被害者基本法の制定や、刑事裁判への被害者参加制度導入につながった。
 22年に発足した「新あすの会」にも所属し、犯罪被害者の相談窓口となる「犯罪被害者庁」設立に向けて動いている。京子さんは「相談窓口ができると被害者も気持ち的に楽になる。犯罪被害者や遺族は、警察にとっての証拠品ではない」と語気を強める。
 憲一さんは事件の約半年後からストーカー被害に関する講演を始め、これまでに40都道府県で約120回に上った。
 7年ほど前からは警察学校などでも講演するように。県警の捜査怠慢を訴える訴訟を起こしていたことなどもあり、依頼が来た時には「まさか警察から」と驚いたという。12都府県警で自らの経験を語り、「最後のとりではあなたたち。被害者を出さないよう頑張ってくださいね」と語り掛けている。
 中には「桶川の事件を知って警察官を目指した」という人もいたといい、憲一さんは「ストーカー被害を撲滅したい。詩織と同じような子を出させないように」との思いで講演を続けている。 
[時事通信社]

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