中国、米念頭に包囲網切り崩しへ=インド、貿易赤字縮減課題
【北京、ニューデリー時事】中国の習近平国家主席とインドのモディ首相が5年ぶりに正式会談した。懸案だった国境紛争の解決に向け前進したことが最大の要因だが、両国にはそれぞれ関係を正常化させたい事情もあった。
◇米中長期対立に備え
中国はこれまで、インドとの首脳会談を慎重に避けてきた。習氏は昨年8月に南アフリカで開催された新興国グループ「BRICS」首脳会議でモディ氏と顔を合わせたが、やりとりは短時間の立ち話のみ。同9月にインドで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は欠席するという異例の対応を取った。習政権にとって、主権や領土を巡る問題は「核心的利益」であり、譲歩が極めて困難な分野だからだ。
それにもかかわらず、冷え込んだインドとの関係修復にかじを切ったのは、米国との対立長期化を念頭に置いた動きとみられる。習政権は、間近に迫った米大統領選で民主、共和どちらの候補が勝利しても、米国の対中強硬姿勢に大きな変化はないと見ている。
米国の対中包囲網が厳しさを増す中、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の一角であるインドを切り崩せれば、米国に打撃となる。トランプ前大統領は、大統領に返り咲けば対中関税を大幅に引き上げると公言しており、習政権には巨大市場であるインドとの経済的つながりを確保しておきたいとの思惑もありそうだ。
◇膨らむ対中赤字
インドは中国との経済関係を正常化させ、対中貿易赤字を縮減したい考えだ。2020年に起きた係争地での軍事衝突以前から中国からの投資には厳しい制約を課してきたが、衝突後は中国経済との分離の動きを加速させた。しかし、国内製造業の弱さもあり、安価な中国製品の流入を止められなかった。
23年度の対中貿易赤字は約850億ドル(約12兆9000億円)。貿易赤字全体に占める割合は約3割に上る。政府は今年7月の年次経済報告で「中国企業に投資してもらい、その製品を輸出する方が効果的」と提言。欧米企業が製品調達先を中国以外にシフトする中、対中関係を正常化させた方が利益を得られるとの見方を示した。
提言に呼応するように、中国の複数の電子機器メーカーによる投資案件が8月に承認されたと報じられた。投資を受け入れるよう国内の業界から圧力が強まっていたという。
[時事通信社]
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