世界経済のリスク見極めを=各国・地域でばらつき―清水季子元日銀理事・G20の注目点、識者に聞く
―世界経済の現状は。
米国経済はしっかりしており、ハードランディング(急失速)にはならないだろう。一方、欧州ではドイツを中心に景気減速の底が見えず不確実性が高い。中国は財政対応をしてきているが、急回復の見通しは立っていない。いずれも下方リスクがある。世界経済はばらつきが広がっている。
―今回のG20の焦点は。
こうした経済情勢のリスクをどう理解するかが重要だ。米欧中とも本来はコロナ禍で大規模に出した財政を一度、店じまいすべきだが、またお金を出すべきだという話になっている。特に米大統領選では両陣営が経済対策の規模を競い合っている。G20では従来、必要な財政対応はしても過度に拡張すべきではないというバランスを重視してきた。今回はどういう議論になるか注目される。
―日銀の植田和男総裁は今後の利上げに際し、海外経済を注視する構えだ。
経済のばらつきが大きくなる中、G20で各国の見方を直接聞くことは大変有益だ。日本の経済・物価情勢は世界の主要国とフェーズが異なる。総裁自身の言葉で現在の情勢判断や留意点を各国と共有することは今後の政策運営を安定的に進める上でも重要だ。
―米大統領選のG20への影響は。
今のG20は格差是正など議長国を務める新興国が望むことだけを議論し、先進国の意見はあまり聞き入れられない。米大統領選の結果がこのパワーバランスにそれほど影響するとは思わない。ただ、デジタル課税など国際課税の取り組みは、政権が代わればどうなるのかという心配はある。
[時事通信社]
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