農家経営、悪化リスク=保護主義も脅威―米大統領選
【ニューヨーク時事】米国の農家が経営悪化のリスクに直面している。主要農産物であるトウモロコシや大豆の相場が今秋の大豊作観測で低迷し、物価高の影響で生産コストは高止まりしたまま。大統領選で共和党候補のトランプ前大統領、民主党候補のハリス副大統領がいずれも保護主義的な政策を掲げる中、巨大市場の中国への輸出拡大は見通しにくい状況だ。
国際指標である米シカゴ市場のトウモロコシ先物価格は、ロシアがウクライナ侵攻を始めた2022年には1ブッシェル(約25キロ)当たり8ドルを超えていたが、今年7月以降は4ドル前後で推移。中国が特に重要な輸出先である大豆も軟調な値動きが続いている。
生産者団体「アメリカ大豆協会」のエコノミスト、ジャッキー・ホーランド氏は「穀物農家は間違いなく収入不足に直面しており、設備投資は鈍化している」と指摘。資金難を理由に、一部の農家が次の作付けに向け肥料の削減すら計画していると説明した。
米取引所大手CMEグループと米パデュー大が国内農家を対象に調査した9月の農業景況感指数は、16年以来の低水準に落ち込んだ。調査では「大統領選後の政策変更による影響を懸念する」との回答が8割近くを占めた。
トランプ前大統領は中国を狙い撃ちにした関税引き上げを主張。一方、バイデン政権は9月に中国製の電気自動車などへの制裁関税を大幅に引き上げており、ハリス副大統領は保護主義的な政策を維持する見通しだ。
米国との対立を背景に、中国が大豆の買い付け先を米国からブラジルなどに切り替える動きがある。ホーランド氏は、高関税をかけ合う貿易戦争が再発すれば「米国の生産者が失ったシェアを取り戻すのは極めて困難になるだろう」と警戒感を示す。
[時事通信社]
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