共和「聖地」、激戦の舞台に=前回勝利、死守狙う民主―トランプ人気根強く・米大統領選
【リポン(米ウィスコンシン州)時事】11月に迫った米大統領選の激戦州の一つ、中西部ウィスコンシン州中部の小都市リポンは、1854年の共和党結党につながる政治集会が開かれた「聖地」とされる。今回の選挙戦では民主党がそのリポンで、共和党支持層の取り込みを狙い運動を展開。ただ、トランプ前大統領の人気も根強く、せめぎ合いが続いている。
◇「素晴らしい伝統」
民主党候補のハリス副大統領は今月3日、リポンで共和党「反トランプ派」代表格のチェイニー元下院議員と並んで演説した。「トランプが返り咲けば、再び憲法を破る」。トランプ氏の支持者らによる2021年1月6日の連邦議会襲撃事件を念頭に、同氏が民主主義にとって脅威だと主張。ハリス氏支持を表明したチェイニー氏こそ、共和党の「素晴らしい伝統に連なっている」と持ち上げた。
地元リポン大のヘンリク・シャツィンガー教授(政治学)は、リポンで集会を開いたハリス氏陣営の狙いについて「共和党誕生の地を象徴的な理由で選んだ」と指摘。トランプ路線に違和感を覚える共和党支持者を引き寄せれば「接戦の中、差を出せる可能性がある」との見方を示した。
ウィスコンシン州は1980年代後半から民主党優位の「青い州」となった。しかし、2016年大統領選では、非大卒白人男性の支持を得たトランプ氏が32年ぶりに勝利。前回20年に民主党のバイデン大統領が「奪還」した。民主党は今回の選挙で同州を死守し、勝利につなげたい考えだ。
◇リンカーンと「五分」
共和党も16年の再現を狙っており、トランプ氏の候補指名を正式に決めた今年7月の党全国大会を州最大都市ミルウォーキーで開催した。その流れで、共和党の歴史を示すリポンを多くの支持者が訪れたという。
白い木造の小屋に掲げられた「共和党誕生の場所」と書かれたプレート。開拓時代の学校の元校舎で、今は博物館となっている。中には大きなストーブと、机といすが数列。当時、子供たちが学ぶとともに、住民の集会も開かれ、反奴隷制の連合勢力として新党の名称を「共和党」にすることを決めた場所だ。
「恐らく(第16代大統領の)リンカーンとトランプが五分五分。3番目が(第40代の)レーガンかな」。案内役のサラ・エリオットさんは、訪問者の間で誰が最も人気かを教えてくれた。共和党支持者からのトランプ人気は今や、奴隷解放を宣言し、南北戦争に勝利して敬愛を集めるリンカーンに並ぶ。
地元教会の牧師ジェファリー・ドッドソンさんによると、人口8000人弱のリポンでは、ウィスコンシン州全体と同様、民主党と共和党の支持が拮抗(きっこう)している。今月13日、日曜礼拝を行ったドッドソンさんは「近隣の人たちへの思いやりを持って選挙シーズンに臨むよう、全ての人に促したい」と語り、党派を超えた相互理解を呼び掛けた。
[時事通信社]
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